大航海時代とM・オリベイラ
ポルティマオは、首都リスボンから車で南へ約3時間ほど走ったところにあります。地図で見ると沿岸地域にあるように見えるし、じっさいレースウィークに宿泊する場所は海っきわの小さな街になることが多いのですが、サーキット自体は近隣の街から少し北方向の郊外へ走った山の中にあるので、海岸やリゾートといったのんびりした印象とは、個人的にはあまり結びつきません。多くの方がご存じのとおり、ポルトガルGPは2000年から2012年までリスボン郊外のエストリルで開催されていて、その後しばらく中断し、現在のポルティマオで開催されるようになったのは2020年からです。
エストリルはリスボンから車で30分程度の場所にあって、天候の不安定さもさることながら、とにかく強風で有名なコースでした。強烈に吹き荒れる日は、脚に力を入れて踏みしめないと前へ進めないこともありました(まじで)。エストリルでは、250ccクラスで宇川徹選手が中野真矢選手をカタパルト発射する出来事や、雨のレースでトップを独走していた松戸直樹選手が転倒したり、KR211V(!!)のケニー・ロバーツJr選手が一周計算間違いで僅差の3位に終わったり等々、いろんなことがありました。
その当時、スペイン・ヘレスとポルトガルが連戦になることが何度かあり、ヘレスからエストリルへクルマで向かうとポルティマオ近郊を通過することになるのですが、たしかSBKがここで開催されるようになった時期なので2008年とか09年とかそそれくらいの時期にこの近くへさしかかった際に「大きな街や空港から中途半端に遠そうで、ここでGPをやるようになったら移動が大変そうだなあ」となんとなく思ったことを憶えています。そのポルティマオで実際にMotoGPが初開催されたのは2020年。新型コロナウイルスのパンデミックで大変だった年です。その数年前から、何かあったときの代替地候補としてリザーブサーキット扱いになっていたのですが、2020年初旬に世界じゅうの動きが止まってカレンダーを全面的に組み直すことになった際、最終戦に組み込まれることになりました。そのレースで優勝したのが、ポルトガル出身ライダーのミゲル・オリベイラ。予選ではポールポジション、決勝レースは独走優勝で、圧巻の速さでした。このシーズン、彼はレッドブルリンクでのスティリアGPでも優勝していて、この最終戦ではポールトゥフィニッシュと力強いシーズンの締めくくりになりました。