第6回 最終戦余談あるいは仁義なき乗り物運篇
第4回の記事は、バルセロナへ向かう移動中に、パリのシャルル・ド・ゴール空港で書き上げて配信したのですが、その末尾で「そろそろバルセロナ行きのボーディングタイムなので、今回はこのへんで」と締めくくりました。現地時間11月13日(水)午後4時頃にCDG到着後、次のバルセロナ便まで5時間ほどの乗り継ぎ時間があったので、空港のエールフランスラウンジに入ってPCを起動し、手短かにニューズレターを仕上げたわけです。このときはまだ、この先に何が待ち受けているのか、当然知るよしもありませんでした。
その第4回配信レターにも記しましたが、CDGでは濱原颯道選手にばったり出くわしています。そのときに「機内に山口さんもいましたよ」とのことで、どうやらAutosportWebなどで活躍する気鋭の若手ジャーナリスト山口富久氏も空港内のどこかで時間を潰していたようです。山口氏とは、バルセロナ便のボーディングゲートで出会いました。それが搭乗前の午後8時半頃だったか。CDG/BCNは約2時間。搭乗後、座席に腰を下ろすと、疲れていたこともあって寝てしまったようです。しばらくして目を覚ますと、すでに離陸して水平飛行に入っているかと思いきや、窓外の風景はまだランウェイにいる模様。
「そうか、まだ飛んでないのか……」と寝ぼけ気味の頭でぼんやり思っていると、機長のアナウンスがあり、それによると、どうやら機体になんらかのエラーが発生しているらしく、確認のためにいったんゲートへ戻る、とのことでした。ゆるゆるとタクシングしてゲートへ着くと、メンテナンススタッフらしき人たちが数名乗り込んできて、コックピットの扉を開けて中へ入っていきました。機長とあれこれ話をしているふうで、やがて機長はコックピットから出てきてキャビンクルーと「まあしようがないよね」風の立ち話をしています。この段階で、「あ、これはもう飛ばないな」と直観しました。