The Count of Tuscany
「シーズン中もっとも盛り上がる……」という凡庸な常套句でリード部分をはじめてみましたが、じつはヨーロッパの会場なんて基本的にどこもものすごく盛り上がるんですよね。来場者数だけでいえば、近年はルマンがぬきんでていますが(公式発表の数字がどこまで信頼できるかは措くとしても)、ザクセンリンクはいつも20万人越えで、今年復活するブルノにしたって、いったいどこからこれだけの人数が沸いてきたんだというくらい、コースを囲む林の中の細い道を人がわらわらと歩いていて、週末総計ではここもまた20万人を軽く超えます。モンメロことバルセロナ-カタルーニャサーキットも、バルセロナ市街からの電車のアクセスが良いことやシャトルバス等が充実していることなどもあって、会場はいつも満員札止め状態です。
そんななかでも、なぜムジェロが「シーズン中もっとも盛り上がる」と言われるのか。理由のひとつはやはり、会場の雰囲気でしょう。ヘレスも他に類を見ない独特の盛り上がりを見せますが、ムジェロの場合は、コースサイドの芝生にテントを設営したりキャンパーを持ち込んできて3日間をそこで過ごす人が多く、夕方以降になると山のこっち側でエンジンを吹かして大爆音を上げる連中がいたかと思うと、コースを挟んだあっち側の斜面で対抗して同じようにエンジンを空ぶかししはじめる。何が面白いのか、そういうばかみたいなこと(褒め言葉です、為念)を一晩じゅうずっとやって遊んでいるため、パドックで寝泊まりする選手や関係者は耳栓をしていなければとても眠れたものではない、という話は昔からよく聞きました。
山のあっち側とこっち側、と記しましたが、ご存じのとおり、このサーキットはトスカーナ地方の山間部にあり、渓谷の傾斜を活かしたコースレイアウトになっています。いろんなところで何度も書いてきましたが、このデザインがじつに絶妙でばつぐんに美しい。神がかった造形美、といっていいようにも思います。