2025年前半戦をざっくり総括

前半戦締めくくりの第12戦ブルノも、おそらく大方の予想どおり例によってワンサイドゲームで終わりました。淡々とした印象のある2025年シーズン前半戦を、言いっぱなしの印象批評的に振り返ってみます。
Akira Nishimura 2025.07.28
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 チェコGP前に発行したニューズレターでは「オジーの引退興行が終わりましたね」という一文で始めたのですが、次のニュースレターを発行するまでの間にオジーが亡くなってしまいました。世界じゅうのSNSで追悼のメッセージが溢れたのは当然として、日本の全国紙でも訃報がわりと大きめのスペースを取って掲載され、日本語圏のSNSでも多くの人々が追悼メッセージをポストしていたのはやや予想外でした。ハードロック・メタル界隈と二輪ロードレースはわりと相性が良いので、これをお読みいただいている方々の中にもオジーファンも少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。とはいえ、オジーのことばかり語っていてもしようがないので本論へ。いや、本論も雑談みたいなものなんですけれども。

 身も蓋もない2025年前半戦12戦24レースの結果は、マルク・マルケスが土曜スプリント11勝、日曜の決勝レースは8勝。土日連勝は8回で、第8戦アラゴンから第12戦ブルノまで5戦連続の土日連覇が続いています。この数字を見るだけでも、そりゃ淡々としたシーズン推移の印象になるよなあ、と思わせるに充分です。

 マルケスが一方的に勝ち続けたシーズンといえば、ホンダ時代の2014年がまさにそうで、この年は前半9戦を全勝してサマーブレイクに入っています(うち開幕から6戦連続ポールトゥウィン)。そのような結果だとじつに単調でつまらないレースの連続だったかのように思ってしまいがちですが、自分の記憶を遡るかぎり、けっしてそんなことはなく、むしろ皆が半笑いになりながら「いったいどこまでいくんだこの若者は……」と底の見えない才能の大きさに瞠目していたような印象があります。前年の2013年に最高峰クラスの最年少記録を片っ端から更新して王座に就いた当時21歳の天才青年の全貌を見てみたい、という興味が、おそらくこのシーズンをワンサイドゲームの単調さから救っていたのではないか、と思います。また、バレンティーノ・ロッシやホルヘ・ロレンソ、ダニ・ペドロサという役者が揃っていたため、彼らがどんなふうに超弩級才能の青年を阻止するか、という興趣もある程度は皆の関心を惹きつける要素になっていたのではないか、と。

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