重力が衰えるとき
オジーの引退興行が終わりましたね。いやそうじゃなくて。それはレースの一週間前だし。
オジーが引退して5日後に行われた(しつこい)ドイツGP初日、金曜午前のFP1でマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)が案の定トップタイムを記録した段階で、大方の人々は「ああ、やっぱりね……」と週末の結果を予見したと思います。じっさいにその通りにことが運んだわけですが、雨の土曜スプリントではポールポジションからスタートした直後の1コーナーでオーバーラン。5番手に順位を落としてしまい、トップに立ったマルコ・ベツェッキ(Aprilia Racing)が快走していたこともあって4周目あたりには3秒ちょいの差が開いていたのですが、そこからぐいぐい追い上げて前のライダーをちぎっては投げちぎっては投げ状態で数周後には2番手へ浮上。ま、これも大方の予想どおりの展開だったでしょう。
10周目を過ぎた頃にはベズとの差が1秒を切り、最終ラップの1コーナー入りできっちり前に出た後はしっかり引き離して1等賞でゴール。「最初にこれくらいのハンディをつけておかないと、この人相手では勝負にならないですよね」というような内容でした。とはいえ、このような勝ち方をされてしまうと、〈はたして誰が勝つのか〉というレース本来の興趣が今年はまったく成立しないことを改めて突きつけられた格好で、観る側としてはこの厳しい現状にちょっと困惑すらしてしまうというか。このスプリントが終わって、「今後も何らかのハンディを与えない限り、レースが成立しないよなあ……」と言っていたら、横から「じゃあホンダに乗せる」という提案があり、この言葉には関係者諸氏に失礼ながらちょっと笑ってしまいました。