波瀾万丈から遠く離れて、そして弟よ
退屈なレース、というと熱心なファンの諸兄姉に怒られてしまいますかね。土曜スプリントは兄ー弟ーアルデゲル、日曜決勝が兄ー弟ーペコ、というリザルトで、両日とも優勝争いの激烈なバトル、といったうようなものはとくに見られませんでした。もちろん、レースなんてものは毎回必ず大激戦になる、なんていうことがあるわけはないのですが、今回は土曜午前のQ2を終えて兄がPP、弟が2番グリッド、となった段階でその後の流れはある程度予測がつく状況だったといっていいでしょう。
じっさいに、土曜のスプリントは中盤に兄が弟の前に出たところで「あ、決まった……」という展開でした。日曜の決勝に至っては、スタートで兄がホールショットを奪ってトップで1コーナーへ入っていった段階で、タイガーマスクの嵐十段なら「決まったな……」といってテレビのスイッチを切っていたであろうレースになりました。国際映像でも、レース中盤以降はトップ争いからアルデゲルvsフランコ・モルビデッリの5番6番争いを重点的に映して、見た目の派手な盛り上がりを演出するのに苦慮している様子でしたね。
ルーキーのアルデゲルが土曜のスプリントで3等賞に入ったのはやはりたいしたものだし、ペコはフロントに大径ディスクを採用したことも安定感の一因となったのか、日曜決勝で3位に入ってここ数戦の苦戦から脱しつつあるようにも見えるのは、「斧、琴、菊(よき、こと、きく)」とでもいうべき状況ですが、上位陣の膠着感とタイム差は、なんというか、まあ、800cc時代の微温的展開を髣髴させる内容でした。Moto3の緊迫感に満ちた争いやMoto2の接近戦を観たあとでは、余計にその印象が強くなった感があります。