第五回・最終決戦を前に(金曜夕刻篇)
周知のとおり、チャンピオンシップはマルティンがバニャイアに対して24ポイントリードしている。土曜のスプリントでバニャイアよりも2ポイント上回る結果を獲得すれば、そこで雌雄が決することになる。土曜にチャンピオンが決定する可能性が生じているのは昨年来スプリントが導入されるようになったからで、もちろん過去には類例がない。しかし、このスプリントでマルティンがバニャイアに対して1点差の優位に留まるか、あるいは点差を縮められてしまうと決着は日曜へ持ち越されることになる。
いずれにせよ、マルティンのほうがどう見ても圧倒的な状況にあることは間違いない。ただ、そのような状況にあるからこそ、チャンピオン獲得がいままで以上に大きな現実味を帯び始めることにもなって、プレッシャーや緊張感もこれまでにないくらいににわかに高まってくる、というのはよくある話で、だからこそ、そんなところに超人のようにも見えるスーパーアスリートたちの(我々と同じような、といっては語弊があるが)人間くささが一気に現れたりもするものだ。
バルセナ郊外のバルセロナーカタルーニャサーキットで行われている第20戦ソリダリティGPの金曜セッションは、予選進出の枠組みを決める午後のプラクティスセッションでバニャイアがトップタイム、マルティンはそこから0.296秒差の5番手タイムで終えている。土曜午後のスプリントと日曜決勝レースのグリッドが決まるのは午後のQ1Q2セッションだが、その前に、今の段階でのふたりの精神状態を少し類推できるような、金曜走行後の彼らの言葉を少し紹介しておこう。