第12回 ファクトリーチームとタイトルスポンサー
「KTMの経営状態がかなりヤバいらしい、近い将来にMotoGPから撤退するかも……」という報道が欧州でにわかにかまびすしくなってきたのは、シーズンが閉幕した11月下旬頃でしたかね。自分自身は欧州で暮らしているわけではないため、周辺取材や関連取材に着手することは不可能で、ヨーロッパのジャーナリスト仲間からの情報や欧州各地の報道発表などに頼らざるを得ない現状では確定的なことは何も言えないのですが、巷間よく言われるように、排気量等のテクニカルレギュレーションが切り替わる2026/2027年は、何らかの意志決定をくだす節目としてわかりやすい指標ではあるのでしょう。KTMがMotoGPクラスへ参戦したのは2017年で、製造メーカーとDORNAの契約は5年更改となっているため、その点でもたしかにちょうどいい節目ではありますね。
とはいえ、企業にその契約満了まで辛抱強く待つことができる経営体力があるのかどうかについては、外野からは判断できないことでもあり、おそらく今後の企業運営そのものにも左右されるでしょうから、彼らがいつどんな判断に至ったとしても不思議ではない、ともいえるでしょう。個人的にはパドックのKTM陣営に知り合いは少なからずいるし、拙著『MotoGPでメシを喰う』をお読みいだいた方ならおわかりのとおり、KTM勢のレースマシン製作を仕切る工場長は古い知己なので、彼をはじめ同社で働く諸氏に悪影響が及ばなければいいのだけどなあ……、と他人事ながら危惧するところではあります。
ただ、企業が損切りを判断するときには非情なくらい迅速に行動するのもまた事実で、これは近年だとたとえばスズキの例を想起すれば明らかですね。KTM自体の過去の例を見ても、2008年の世界同時不況の煽りを受けて2009年秋にいきなり125ccクラスと250ccクラスからの撤退を発表したのはまさに青天の霹靂、といっていいほどの唐突さでした(このあたりの経緯や事情については『最後の王者』で詳述しています)。