第10回 これから日本のMotoGP報道はどうなるんだろう問題
数日前の午前、Webミスターバイクの某氏から電話があった。経営が厳しく、長年続けてきた『MotoGPはいらんかね』の稿料を払うのが今後は難しいため2025年シーズンの掲載は見合わせたい、という。「それでもいいですか……」と気遣わしげな口調で言っていただいたのだが、「それはだめです」という裁量がこちらにあるわけではない。それに、「いやです」と言ってみたところで掲載が継続するわけでもない。口調としては質問の体裁を取っているけれども、要は決定事項の通知である。このような事態だとその言葉を受け容れる以外の選択肢はなく、「残念ですけれども、しかたないですね」という返答が唯一のオプションなわけだ。
それにしても、今後は『MotoGPはいらんかね』の稿料を払うのが厳しい、ということだけれども、こちらはけっして下品なほど莫大な稿料をいただいていたわけではない。金額を言えばおそらく多くの人がびっくりするであろう、ごくごく上品なものである。そもそも今年は、毎年の年末恒例で行っている『行った年来た年MotoGP』企画の技術者取材で静岡に行く場合、往復の交通費(高速道路代やガソリン代)について「お支払いできません」という告知をされていたので、これは本当に経営状況が厳しいのだろうなという想像はすでにある程度できていた。とはいえ、編集部の寛大な方針で放し飼いのようにずっと自由に書かせていただいていた長年の企画が終わってしまうのは、非常に残念というほかない。
『MotoGPはいらんかね』は当初、雑誌での1ページだったか2ページだったかの記事としてスタートした。1990年代からMotoGPや鈴鹿8耐や全日本ロードレースについてあれこれ好き放題書いていた週刊プレイボーイのモータースポーツコラム(そういう連載ページがあったのですよ、当時は)が時代の趨勢を受けて2000年代中盤頃になくなることになり、それとほぼ入れ替わるような時期にミスターバイクでグランプリ関係の連載の話をいただいた。なので、こちらとしては週プレモータースポーツページのテイストを引き継ぐというか場所を引っ越すというか、そんなつもりで開始した連載企画だった。週プレとミスターは、ともにアウトロー的なスタンスという意味でもそこはかとなく似ているところがあり、ずっと楽しく書かせていただいていた。それは結果的に最後のコラムになってしまった2024年最終戦と事後テストのレポートまで、一貫して変わらない。